かつてゴキブリが支配していた世界

なんだってこうゴキブリは、気持ち悪いのか、怖いのか。

気持ち悪いと感じる昆虫はほかにもいるのに、ゴキブリほどのものはない。
男の子は虫やトカゲを捕まえたりむしったりできるのに、ゴキブリを好んで狩る奴には会ったことがない。

ハレグゥ」の登場人物の多くはゴキブリを"アレ"と呼び、口にするのもはばかるようだ。
作者の金田一蓮十郎も口にするのもダメらしい。

このゴキブリへの恐怖感はどこから沸いて来るのだろう?

ここに一つの仮説がある。



かつてゴキブリは人類を支配していた。イヤ、地球を支配していたといってもいい。
人間は虐げられていた。
そう、ショゴスのように。クジン人のように。スリヴァーのように。

やがて時代が替わり氷河期が訪れ、ゴキブリが万物の霊長の座を明け渡し、人類がゴキブリに対して優位に立った現在でも、あの黒々としたツヤを見るたびに、遺伝子に刻まれた種としての過去の記憶が、恐怖感をまざまざと呼び起こさせるのだろう。